プロの心を鍛える心理療法入門
トレーナー 武野 顕吾(ボールパークコーポレーション)
例えば、” 試合前に緊張する ” というスポーツ選手に対して、我々臨床家はどのようなアプローチができるだろうか?選手が世界一を目指して戦う時、彼らは自分の内面の緊張を受け入れ、また刻々と変わる外的状況にも主体的に反応し、そして時に自分のベストを越えたパフォーマンスを出すことができる。つまり自身の内と外の双方に対してレジリエントにいることが望まれる。このように自分の限界を超えようとする人たちの心を鍛え、支援するための心理療法を学ぶのが本ワークショップの目的である。この心理療法の対象者はスポーツ選手のみならず、各界で自分の能力をさらに向上させようとする ” プロ” と呼ばれる方々全般に対して適応可能なものである。本ワークショップでは、シナリオロールプレイやディスカッションなどを通じ、参加者ご自身がそこで感じた体験もベースにして学んでいく。
PTSD予防と心理療法
トレーナー 橋本 和典(立教大学現代心理学部/PAS心理教育研究所・同福島トラウマ心理療法センター)
PTSDの予防には、二つの砦がある。第一の砦は、死の脅威ストレスをトラウマにしないこと。その砦が突破された場合の第二の砦は、抱えたトラウマ反応を障害にしないことである。本ワークショップは、地震、大雨の甚大災害が続き、今後もメガ災害が確実に予想される日本において、さらには、日常臨床の中での避けがたい事件や事故対応において、PTSDをより積極的な砦対応を可能にする予防教育と力動的支持的心理療法の基本技法のイメージをつかむことを目的とする。実際のトラウマ事例についての全員での分析及び対応可能性の確認(SVを含む)を方法とする事例ワークショップ形式で行う。PTSD、トラウマ、災害対応に関心のある学会員や参加者、大学院生にぜひ積極的に参加してほしい。
※参加者の中で、2名の事例提出者を募 集します。 希望の方は 、200字(匿名性を保持したもの)の要約も含めて提出してください。
子どもの中の愛する能力としてのレジリエンス
トレーナー ラルフ・モラ(個人開業/メリーランド大学)
このワークショップで主にお話しするのは、子どもの精神的発達の基礎となる自己決定と自己譲渡(self-surrender)についてです。自己決定への意欲により子どもはユニークでいられる一方、自己譲渡は子どもが社会に参加できるようにします。両方とも必要なことです。このどちらか一方しか発達しないと、精神的に不健康な子どもになったり、不快な社会になったりします(Angyal, 1951)。自己決定は自発性、自己主張、自由や支配への努力などに表れます。自己譲渡は子どもが自分より大きいと考えるものの一部になろうとする試みに表れます。実際、子どもは、自分の身近な世界を統一する者になろうと努力し、また自分の存在する上位世界の一員になろうと努力します。この両方がゲシュタルトを形作り、子どもは真実の愛を経験し成長できるようになります。この観点からみると、子どものレジリエンスは、子どもが生物学的にまた自分の家庭内や環境において、自己決定と自己譲渡の両方を発達させるよう促す能力に反映されます。
※ このワークショップには当日通訳がつきます。
事例研究法
トレーナー 小谷 英文(IADP 理事長/PAS心理教育研究所)
事例研究は学術的知見をもたらすのみならず臨床成果を高めるものであり、困難患者や新奇な事例に関しては常に臨床実践に並行してなされるべきものである。また心理療法、セルフケアセラピィ等の臨床介入、カウンセリングを本格的に学ぼうとするなら、技法の習得は事例研究によってより確かなものとなる。事例研究の豊かな学術的展開と臨床実践の質を担保し高めるために、伝統的なアプローチから現代科学手法の新しいアプローチまで、目的に応じた組み立て方を学び自験例による演習によって実力アップを図ろう。
※ワークショップ 内容:Ⅰ. 小講義:事例研究4アプローチ Ⅱ. 事例研究演習:自験例の事例研究展開
※進め方:小講義を出発点として、参加者の自験例を事例研究デザインに乗せ、テーマ、研究手順を構成、期待される成果を検討する。
※参加条件:関心を持つ事例を持参すること。文書にまとめる必要なし。
【定員】20名
応答構成入門―共感的理解の体験的習熟のために―
トレーナー 能 幸夫(PAS心理教育研究所/湘南病院相談室)
みなさんは、“ 共感的理解“ をどのように理解していますか。カウンセリング、心理療法といった心理面接において、“ 共感的理解”の促進的な介入としての意味を提唱したロジャーズは実際にそれをどのようなものと捉えたのでしょうか。
クライエントの発言に対する面接者の応答を組み立てていく応答構成は、臨床家の「考えと認知」(P)、「気持ちや感情」(E)、「行動」(A)と、クライアントの「考えと認知」(P)、「気持ちや感情」(E)、「行動」(A)を識別し、その上で、自分の捉えたクライアントの体験についての理解をクライアントに伝えていくことを習練していきます。その営みこそが共感的理解の基礎となります。応答構成を通じて、この共感的理解の本質を体験的に理解していきましょう。
IADP応答構成のリピーターも歓迎します。同じ場面でも自分の臨床の積み重ねによって、新たな応答が構成されていきます。それはきっと面白い体験になりますよ。
【定員】6名以内
バーンアウト予防のためのStory Making Group(SMG)体験ワークショップ
トレーナー 花井 俊紀(PAS心理教育研究所)
心理療法家、看護師、医師、福祉士、児相職員、DVカウンセラーなど、臨床家・クライシスワーカーが人の生き死や身の安全の危機に携わる上で、大小問わずミスや失敗は避けては通れない。命や安全を守れなかったことの自責や後悔は、放っておけばうつやバーンアウトを引き起こす。安全な場で、避けずに向かい合い、荷降ろしすることが必要である。
本ワークショップの目的は、PTSD予防のための小集団精神療法として開発された「Story Making Group」を体験し、日々の臨床にある痛みに安全に向き合い、レジリエンスを回復・維持させることである。SMGではフィクションの物語作りを通して自分に向かい合うため、守秘義務など話すことの制限が多い方こそ、安全に活用していただけるワークショップとなっている。
※SMGの詳細は右を参照:小谷英文・橋本麻耶・花井俊紀・西浦和樹(2015)ストーリー・メイキング・グループの力動的治療機序-東日本大震災臨床事例から- 集団精神療法31(1). 48-57.
【定員】10名以内